住宅ローンがある場合の財産分与|売却・住み続ける・名義変更の判断
離婚時に住宅ローンが残っている場合の財産分与について、オーバーローン・アンダーローンの違い、売却か住み続けるかの判断、名義変更・連帯保証・任意売却まで解説します。
住宅ローン×財産分与 判断フロー
不動産の時価を調べる
不動産会社の査定・公示地価・路線価などを参考に時価を把握する
ローン残高と比較する
時価 > 残高 → アンダーローン(プラス財産あり) 時価 < 残高 → オーバーローン
売却か住み続けるかを検討する
双方の合意・子の生活環境・金融機関の対応等を踏まえて判断
名義・連帯保証の処理を金融機関と相談する
名義変更・借り換え・連帯保証人解除の可否を確認
財産分与の全体額を試算したい方へ
預貯金・不動産・退職金等を入力して財産分与額を自動計算できます。
ご利用にあたっての注意事項(開く)
- 本ページは一般的な情報提供を目的としており、法的・税務上の助言ではありません。個別の判断は弁護士・税理士・金融機関にご相談ください。
- 住宅ローン・不動産に関する手続きは金融機関・案件ごとに異なります。実際の手続きは必ず当該金融機関・専門家にご確認ください。
- 法律・税制は改正で変わる場合があります。
住宅ローンがある場合の基本的な考え方
離婚時の財産分与では、婚姻中に購入した自宅(住宅ローン付き)も対象資産に含まれます(民法768条)。 しかし、住宅ローンが残っている場合は単純に「家を半分ずつ」とはいきません。 財産分与において重要なのは「時価(売却した場合に得られる価格)からローン残高を差し引いた純資産額」です。
また、不動産は分割できないため、実務上は「売却してお金に換える」か「一方が住み続ける」かの選択になります。 どちらの方法を選ぶかによって、ローン名義・連帯保証・税務上の取り扱いが大きく変わります。
財産分与の計算イメージ
不動産の財産分与額 = 時価評価額 − ローン残高(婚姻期間対応分)
※ 婚姻前からのローン(特有財産部分)がある場合は、婚姻期間に応じた按分が必要です。
アンダーローンとオーバーローン
アンダーローン
時価 > ローン残高
売却すればローンを完済してもプラスが残る状態。差額が「財産分与対象資産」となり、原則2分の1ずつ分けます。
例:時価3,000万円 − ローン残高1,500万円 = 純資産1,500万円 → 各750万円
オーバーローン
時価 < ローン残高
売却してもローンを完済できない状態。最高裁平成20年判例では、オーバーローン不動産は財産分与の対象から外れると判断されています。残債の処理が別途必要になります。
例:時価1,500万円 − ローン残高2,000万円 = −500万円(財産分与対象外)
※ 不動産の時価は不動産会社の査定(無料)で把握できます。公示地価・路線価は国土交通省・国税庁のウェブサイトで確認できます。 ただし、実際の売却価格は査定額と異なることがあります。
売却か住み続けるかの判断
不動産の処理方法は大きく2つです。選択に際しては財産面だけでなく、子どもの生活環境・学校・親族との距離なども考慮されることが多いとされています。
選択肢1:売却して代金を分ける
メリット
- • ローン名義・連帯保証の問題が解消
- • 現金で明確に分けられる
- • 将来的なトラブルが起きにくい
デメリット・注意点
- • 転居が必要(特に子どもへの影響)
- • 売却にかかる費用・時間
- • 譲渡所得税が発生する場合がある
選択肢2:一方が住み続ける
メリット
- • 子どもの環境変化を最小化できる
- • すぐに転居する必要がない
デメリット・注意点
- • ローン名義・連帯保証のリスクが残る
- • 名義変更に金融機関の審査が必要
- • 住み続ける側が「代償金」を払う場合がある
名義変更の難しさ
住宅ローンの名義変更(主債務者の変更)は、単に夫婦間で合意しても実行できません。金融機関の審査・承認が必須であり、 新たな名義人(住み続ける側)が単独でローンを背負える収入・信用力を持っているかどうかが厳しく審査されます。
名義変更の主な方法
借り換え(新規ローンへの切り替え)
住み続ける側が新たにローンを組み、旧ローンを一括返済する。審査を通過できれば名義問題が解消する。
金融機関への債務者変更申請
同じ金融機関で主債務者を変更する申請。審査が厳しく、収入・勤続年数等が基準を満たさないと認められないことが多い。
無断での所有権移転は危険
ローン残存中に金融機関の承認なく所有権を移転すると、ローン契約の「期限の利益喪失事由」となる場合があります。必ず金融機関に相談してから手続きを進めてください。
連帯保証・連帯債務の問題
ペアローン・収入合算で住宅ローンを組んでいる場合や、一方が連帯保証人になっている場合は、 離婚後も双方に返済義務が残る可能性があります。
| 形態 | 内容 | 離婚後のリスク |
|---|---|---|
| ペアローン | 夫婦各々が独立したローン契約。互いが連帯保証人になることが多い | 片方が返済を止めると連帯保証人に全額請求される |
| 収入合算(連帯債務) | 1本のローンに夫婦が連帯債務者として記載 | 双方が全額の返済義務を負う。金融機関は各人に全額請求できる |
| 連帯保証 | 主債務者の返済が止まった際に代わりに返済する義務 | 離婚だけでは連帯保証から外れない。金融機関の承認が必要 |
連帯保証人から外れるための主な方法
- 別の保証人(第三者)に交代してもらう(金融機関の審査必要)
- 主債務者が単独で借り換え(収入・信用力が条件)
- 保証会社に切り替えて個人保証を外す(金融機関による)
いずれの方法も金融機関の承認が前提となります。離婚届提出前に金融機関への相談を先行させることが重要です。
任意売却という選択肢
オーバーローン状態(売却価格がローン残高を下回る状態)でも、金融機関の同意を得て不動産を売却できる方法が「任意売却」です。 競売に比べて高値で売却できる場合が多く、近隣への公表も少ないとされています。
任意売却の流れ(概要)
- 1
金融機関に任意売却の意向を申し出る
返済が困難・または離婚に伴い売却したい旨を相談。担当窓口(債権回収部門等)が対応する。
- 2
不動産会社を通じて売却活動
任意売却の実績がある不動産会社に依頼し、市場価格で売り出す。
- 3
金融機関の承認のもと売却成立
売却代金で返済できない残債については、分割払い等の交渉を行う。
任意売却の注意点
- 競売開始決定後は任意売却できる期間が限られます。早めの相談が重要です。
- 連帯保証人の同意も必要になります。
- 任意売却後の残債の取り扱いは金融機関・個別事情によって異なります。
- 任意売却専門の不動産会社・弁護士への相談をおすすめします。
相談先
0570-078374
法テラス(サポートダイヤル)
0570-0-55210
DV相談ナビ(#8008)
0120-279-338
よりそいホットライン(24時間)
参考・出典
- 民法768条(財産分与)、820条・819条(親権)
- 法務省「離婚に関する法制度」
- 法テラス
- 国税庁「マイホームを売ったときの特例(3,000万円特別控除)」
- 最高裁判所平成20年(2008年)12月18日判決(オーバーローン不動産の財産分与に関する判例)
最終確認日: 2026年4月23日
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