親権と監護権の違いと決まり方|裁判所が見る論点
親権・監護権の違い、裁判所が重視する継続性の原則・母性優先・子の意思・監護実績などの判断基準を解説します。共同親権制度の改正動向についても取り上げます。
親権・監護権の要点まとめ
親権(民法818条・819条)
- • 身上監護権(日常の養育・教育)
- • 財産管理権(子の財産の管理・法的行為の代理)
- • 離婚届に記載必須(未記載では不受理)
監護権(民法766条)
- • 日常の養育・生活・教育
- • 通常は親権者が持つ
- • 例外的に親権者と分離可能
※ 2026年施行予定の民法改正により、離婚後の共同親権制度が導入される予定です(下記「共同親権改正動向」参照)。
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ご利用にあたっての注意事項(開く)
- 本ページは一般的な情報提供を目的としており、法的助言ではありません。親権・監護権の判断は個別事情に左右されるため、弁護士・法テラスにご相談ください。
- 共同親権制度に関する記述は2026年4月時点の情報です。施行後の詳細な運用については法務省・裁判所の最新情報をご確認ください。
- 法律・制度は改正で変わる場合があります。
親権・監護権とは
「親権」とは、未成年の子に対して親が持つ権利・義務の総称です(民法818条)。 大きく「身上監護権」(日常の養育・教育・居住地の決定など)と「財産管理権」(子の財産を管理し、法律行為を代理する権限)に分かれます。
日本では、婚姻中は父母が共同して親権を行使しますが(共同親権)、 離婚する場合は民法819条の規定により父母のどちらか一方が親権者となる「単独親権制」が原則とされてきました。離婚届には親権者を記載する欄があり、記載がないと離婚届は受理されません。
親権と監護権の違い
通常、親権者が監護権(実際に子どもの世話をする権利・義務)も一体として持ちます。 ただし、協議・調停・審判で別々に取り決めることが認められる場合があります(民法766条1項)。
| 項目 | 親権 | 監護権(単独設定時) |
|---|---|---|
| 内容 | 身上監護+財産管理+法的代理 | 日常の養育・生活・教育のみ |
| 法的行為 | 子の名義で契約等を行う権限あり | なし(親権者が行う) |
| 分離の可否 | 原則一体(分離は例外) | 協議・審判で別途指定可能 |
| 変更 | 家庭裁判所の審判が必要 | 調停・審判で変更可能 |
親権者と監護権者を分ける場合、子の生活の安定という観点から、両者の協力関係が維持できるかどうかが重要な前提となります。
裁判所が重視する決定基準
親権者(監護権者)の決定において裁判所(家庭裁判所調査官による調査を含む)が考慮する主な要素は以下の通りとされています。 どれか1つが決め手となるのではなく、子の利益の観点から総合的に判断されます。
継続性の原則(現状維持)
これまで主に子の世話をしていた親(主たる監護者)が親権者になる可能性が高いとされています。 子どもの生活環境を安定させることを優先するためです。 別居が長期化している場合は、別居中に実際に監護している親の立場が強くなる傾向があるとされています。
母性優先(幼児については特に考慮)
特に乳幼児期は母親との愛着形成が重視される場合が多いとされています(「母性優先の原則」)。 ただしこれは絶対的なルールではなく、父親が主たる養育者であった実態があれば父親が認められるケースもあります。
子の意思(特に10歳以上)
子どもの年齢・成熟度に応じて、本人の意思が尊重されます。 一般的に10〜12歳以上になると、家庭裁判所調査官が子どもから直接意思を聴き取ることが多いとされています。 ただし「親に遠慮している」「片方の親に誘導されている」と判断されると、意思が割り引かれることもあります。
監護実績・監護能力
日常生活での具体的な養育実績(食事・送迎・病院受診・学校行事への参加等)が重要な判断材料となります。 「親権を取りたい」と主張するだけでなく、具体的な養育記録(育児日誌・写真・連絡帳等)を保存しておくことが有効な場合があります。
きょうだい不分離の原則
複数の子どもがいる場合、原則として兄弟姉妹が一緒に生活できる環境が優先されます。 別々の親に子どもを分けることは、よほどの事情がない限り避けられる傾向があります。
面会交流への協力姿勢
親権を取れなかった親(非監護親)との面会交流に積極的に協力できるかどうかも、 子の福祉の観点から判断要素のひとつとされます。 相手方の面会を妨害する姿勢は不利に働く可能性があります。
調停・審判の流れ
親権について夫婦間で合意できない場合、家庭裁判所への調停申立てが必要になります。
親権決定の手続きの流れ
- 1
協議(夫婦間の話し合い)
合意できれば離婚届に親権者を記載して提出。
- 2
離婚調停(家庭裁判所)
調停委員が間に入り話し合い。調停成立で親権者が決まれば調停調書に記載。
- 3
家庭裁判所調査官による調査
争いがある場合、調査官が子どもの意思聴取・生活環境調査・学校へのヒアリングを行う。
- 4
審判(調停不成立の場合)
家事審判官(裁判官)が職権で親権者を決定。即時抗告(2週間以内)が可能。
- 5
人事訴訟(離婚訴訟)
調停前置主義により調停を経た後に訴訟提起。離婚と同時に親権者を決定する。
共同親権制度の改正動向
2024年5月に民法等の一部を改正する法律が成立し、離婚後も父母双方が親権を持つ「共同親権制度」が2026年(令和8年)5月23日に施行される予定です(法務省公表)。
改正のポイント(2026年5月施行予定)
- 離婚後も父母が合意した場合は「共同親権」を選択可能
- DV・虐待がある場合など「子の利益を害する」と認められる場合は単独親権のみ
- 協議で決まらない場合は家庭裁判所が判断
- 既に離婚済みのケースにも一定の条件で適用される可能性あり
共同親権制度の詳細な運用ルール(日常の意思決定の範囲・緊急時の対応等)については、 施行後の法務省・最高裁判所の情報を継続的にご確認ください。
緊急・相談先
110
警察(緊急・身の危険)
0570-078374
法テラス(サポートダイヤル)
0120-279-338
よりそいホットライン(24時間)
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